身のまわりから形が決まっている長方形を探してきて、その長方形の縦と横の長さの比
について考察する。そして、黄金比や白銀比(1:√2)について説明し、2次方程式を利用して
比を求め、探してきた長方形を分類する。
自ら長方形を探してきて測定、考察することで、数学を利用して現実事象を分析すること
のおもしろさを感じるのが、この教材のねらいである。
前の授業で、名刺、スイカ(JR)など、身のまわりにある長方形の例をあげ、長方形を探して
持ってくるように言っておく。
授業では、用意してきた長方形の辺の長さを定規で測らせて、その辺の比を求める。
教科書とノートは共通題材として測るようにする。測定結果の例は以下の通りである。
長方形 | 短い辺の長さ | 長い辺の長さ | 比 |
---|---|---|---|
教科書 | 14.8 | 21.0 | 1:1.42 |
ノート | 17.8 | 25.2 | 1:1.42 |
文庫本 | 10.5 | 15.0 | 1:1.43 |
A3の紙 | 29.7 | 42.0 | 1:1.41 |
A4の紙 | 21.0 | 29.7 | 1:1.41 |
B4の紙 | 25.7 | 36.4 | 1:1.41 |
B5の紙 | 18.3 | 25.7 | 1:1.41 |
名刺 | 5.5 | 9.1 | 1:1.65 |
スイカ(JR) | 5.4 | 8.7 | 1:1.61 |
新書本 | 10.5 | 17.1 | 1:1.63 |
紙を半分に折っても形がかわらない(相似)である白銀比の原理に
ついて説明し、その比を求める。図1で、1:x=x/2:1より、
x2/2=1なので、x=√2≒1.41 となる。
白銀比の長方形は、半分に折ると2つの相似な長方形ができるた
め、教科書やノート、プリントなどの印刷物は、紙の無駄を少なくできる
ように白銀比になっていると考えられる。また、文庫本は後で増刷するので、これ
も紙を効率的に利用できるように、白銀比になっていると考えられる。
長方形から正方形を切り取って残った長方形が元の長方形と
相似である黄金比の原理について説明し、2次方程式を利用し
てその比を求める。
図2で、1:x=(x-1):1より、x2-x-1=0なので、
x=(1+√5)/2≒1.62 となる。
黄金比の長方形は、古代から伝わる最も美しい長方形といわれていて、
パルテノン宮殿、ミロのビーナスなど、西洋の建築物や美術などにも、その比が登場している。
また、生物の成長や人間の感覚(株式)、正五角形の対角線などにも、その比を見ることが
できる。
名刺、スイカ(JR)が黄金比の長方形になっているのは、その形が美しいからだと考えられる。
また、新書本も最初に売り出すために、美しい形にしていると考えられる。
ただ、法隆寺など日本古代の建築物には、黄金比ではなく白銀比が使われているとも
いわれている。日本では、白銀比の形の方が美しいと感じられていたのかもしれない。
黄金比と白銀比の長方形、どちらが美しいかで、「あなたは西洋風か日本風か?」の心理テスト
をしてもおもしろい。